私たちの身体にとって大切な「酵素」のお話

酵素はドリンクやサプリメントとして販売されていることも多く、なんとなく身体に良いもの、必要なものと感じている方が多いかと思います。酵素は私たちの身体に大切なものであることは間違いありません。では、酵素とはいったい何なのか、身体にどんな影響を与えてくれているのか、みていきましょう。

酵素ドリンク

巷には多くの酵素ドリンクが販売されています。飲まれている方の声を聞くと「酵素が摂取できる」と思っている方が多いように感じますが、実は酵素ドリンクは、酵素を摂取するためのものではなく「酵素の働きによってつくられた」商品なのです。原材料の表示を見てみると、多くが果物や野菜です。中にはぶどう糖果糖液糖といわれる、人工甘味料が使われていることもありますので、しっかりと成分表を確認してから購入しましょう。

ヒトなどの生物は、生命活動を維持するために酵素を必要としています。食べたものを消化したり栄養を体内に吸収したり、活動するためのエネルギーを生み出したり、多くの反応で酵素がつかわれます。この酵素の働きを利用して、食品を発酵させるなどしてつくりだされた商品が酵素ドリンクのようです。

酵素はタンパク質

では、ここからは酵素について確認していきましょう。私たちの身体を健康に保つために、酵素は必要不可欠なものです。消化酵素や代謝酵素と呼ばれることが多いですが、食べた食品を消化するためには、アミラーゼやプロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素が必要です。さらに、消化吸収した栄養素をエネルギーに変える時には数多くの酵素が関わっています。

これら酵素の正体はというと、タンパク質なのです。意外でしょうか？　体内に存在するタンパク質は何かしらの働きをもっており、酵素だけでなく、酸素を全身に運んでくれるヘモグロビン、身体を守る抗体の役割をするグロブリンなど、実に多くの仕事をしてくれています。そのうちのひとつ、消化や代謝反応を助けるという仕事をしているタンパク質が酵素なのですね。これら体内のタンパク質は一人ひとりの遺伝情報を元につくられているため、全員異なる特徴をもちます。さらに、多くの場合、酵素には補酵素と呼ばれるサポート役が必要で、これがビタミンやミネラルです。つまり、消化や代謝機能を高めるためには、タンパク質である酵素やビタミンやミネラルである補酵素がしっかり機能する必要があります。そのため、日頃の食事でタンパク質やビタミン、ミネラルをしっかり摂取することが大切です。

酵素の状態を知る

先述したように、酵素の構造は遺伝情報と関係しており一人ひとり異なっている上、働きが低下していると代謝が落ち、体調不良などの様々な影響を及ぼします。この酵素の機能を確認することができるのが血液検査です。日頃、健康診断で採血を行って、基準値から逸脱している場合は、経過観察や病院への受診を促されることがあるかと思いますが、それ以外の項目については、何を見れば良いかかわからないという方が多いのではないでしょうか？

分子栄養学という医学では、血液検査データの数値から、その人の酵素活性の状態を推測することができます。例えば、肝臓の機能を見るASTやALTといった数値は、「アミノ基転移酵素」といい、アミノ酸つまりタンパク質代謝が行われる際の酵素の数値です。さらにLDHは「乳酸脱水素酵素」で、いわゆる疲労物質といわれる乳酸をエネルギーに変える時に必要な酵素のことなのです。これらの数値を見ることで、酵素がしっかりはたらいているのかを推測することができます。