栄養吸収に必要な胃酸

今日は胃酸についてのお話です。胃酸はタンパク質を消化してくれるなど、とても大切なはたらきをもっています。そのため、胃酸の分泌量が少ないと栄養がうまく吸収されません。この胃酸の分泌量を減らしてしまう原因や胃酸の重要性を確認していきましょう。

胃酸のはたらき

まず胃酸のはたらきについてみていきますが、胃酸とは胃液の成分のひとつです。胃酸、ペプシノーゲン、内因子、粘液の4つをまとめて胃液といいます。胃酸という言葉が聞き慣れているかと思いますので、まとめて胃酸の仲間だと考えていただいて大丈夫です。

胃酸のはたらきは様々ですが、特に食物の殺菌とタンパク質の分解が重要です。食事から摂り入れた食物は、口小腸大腸の順番で消化管を通り、最後は便となり排泄されます。栄養が吸収されるのは主に小腸ですが、一度にたくさんのものは送れないので、一度胃で溜めておき、少しずつ小腸に送り込みます。それが長時間に及ぶと、もちろん食品は腐りますので、胃酸のはたらきにより殺菌されています。さらにタンパク質分解酵素であるペプシンは、胃液に含まれるペプシノーゲンからつくられます。つまり、お肉などのタンパク質をアミノ酸に分解するために胃酸が必要なのです。

胃酸が減る理由

胃液は1日に1500mlも分泌されるといわれていますが、様々な理由で分泌量が低下します。胃酸が減る原因の1つ目は薬です。胸やけや吐き気などの症状が出る逆流性食道炎では、胃酸分泌を抑える薬が処方されます。症状改善のため、一時的に飲むのであれば問題ありませんが、長期間飲み続けているとタンパク質の消化不良や腸内環境悪化につながります。胃酸が減る原因の2つ目は交感神経優位な状態が続くことです。自律神経には交感神経と副交感神経があり、胃酸分泌などの消化管の機能は副交感神経の作用によるものです。そのため、ストレスの持続や緊張状態の長期化は、胃酸の分泌を低下させます。一方でカフェインやアルコールは胃酸分泌を促進させるはたらきがあります。本来はお肉などを食べた時にしっかり胃酸が出てくれることが大切なのですが、カフェインやアルコールを摂り過ぎると、胃酸過多になってしまい、それこそ逆流性食道炎のような症状を引き起こすことがあります。

胃酸低下は栄養素不足につながる?

上記で胃酸の役割と胃酸分泌量低下の原因をお伝えしてきました。では胃酸が少なくなると何が問題なのでしょうか?

  • タンパク質の分解、吸収不良

胃液に含まれるペプシノーゲンはタンパク質分解酵素ですので、肉や魚といったタンパク質の消化がうまくいかず、未消化のタンパク質が小腸に向かうことになります。

  • 食物の腐敗、腸内環境悪化

胃液は胃や腸の粘膜を保護するはたらきをもち、一時的に胃に貯蔵しておく食物が腐らないように殺菌してくれているため、分泌量が少ないと胃や腸の環境が悪化します。

  • 栄養素の吸収が悪くなる

食物に含まれるビタミンB₁₂やミネラルは、胃酸や内因子のはたらきによって体内に吸収されていきます。そのためこれらが十分に分泌されていないと、他の栄養素までも吸収できないといったことが起こります。

このように、栄養を吸収するために胃酸は欠かせません。食事をした時にしっかり分泌されるよう、生活習慣も見直していきましょう。